SAPに関わりのある方なら聞いたことのある2025年問題と延長について解説していきます。
2025年問題とは
SAP Business Suite 7のメインストリームメンテナンスが2025年末までで終了してしまうことを2025年問題と呼ばれておりました。
つまりSAP Business Suite 7サポート終了が2025年末で迎えるということです。
SAP Business Suite 7の対象となる機能は以下となります。
- SAP ERP 6.0
- SAP CRM 7.0
- SAP SRM 7.0
- SAP SCM 7.0
- SAP PLM 7.0
サポート終了についてもう少し具体化すると皆さんなじみのある例として、
Windows7のサポートが2020年1月14日に終了いたしましたがこれとほぼ同様となります。
Windowsですとサポートが切れた場合、機能の更新プログラムやセキュリティの
更新プログラムなどを提供しておりましたが提供されなくなります。
SAP Business Suite 7も同様に機能更新プログラムの提供がされないためこれ以上の
機能改善や品質向上はされなくなります。
セキュリティについては「SAP Security Patch Day」というものがあるため
メインストリームメンテナンスとは別の様に見受けられますが「SAP Security Patch Day」は
メインストリームメンテナンスの一部の様にも読取れるためセキュリティ面の改善提供も
されなくなると思われます。
そもそもパッチ提供がメインストリームメンテナンスに含まれているため
仮にセキュリティの脆弱性を見つけた場合、対処ができないと思われる。
2025年問題延期
これ以上の延期はないだろうと思われていた方も多くいると思われますが、
SAP社は2020年2月4日(ドイツ現地時間)にメインストリームメンテナンスを
2027年末までに延期する発表をしました。
メインストリームメンテナンス終了後、現行の保守基準料金に2%の追加料金を
支払うことですべてのサポートサービスを受けることができます。
この延長保守サービスは2030年末まで提供されるとのことです。
延期理由
なぜ延期したのか簡潔に述べるとS/4HANAの移行を考慮したためであり、
変革を遅らせる措置ではないとのことです。
米国やドイツでのSAPユーザグループ(ASUG,DSAG)の調査によると米国では
S/4HANAへ移行しない顧客がいない、ドイツではS/4HANAへの投資が急増しているとの
結果が出ているようです。
この調査結果からSAP社は顧客の声に耳を傾け、
S/4HANAへ移行するための充分な期間を確保し、ERPの長期サポートを行うことで
S/4HANAを充分に活かせるようにプロジェクトの複雑さを考慮したとのことです。
サポート終了後の問題点は?
サポートは終了してもシステムは使い続けることが可能であり、
パソコンもWindows7またはそれよりも前の世代を使っている会社は
まだいるようなのでSAP Business Suite 7も同様に使用し続けても大きな問題があると
あまり感じないように思えます。
しかし先々のことを考えると大きな問題であることが分かります。
その問題として大きく以下2つあるといえます。
- リアルタイム性が失われる
- サポート切れによる保守作業の増加
まず一つ目はビジネスの変革に伴うERPソリューションの肥大化により、
リアルタイム性が失われる問題が発生します。
具体的にいうと、ERPシステムは基幹系システムという事もあり
様々な業務に適応しなければならず他にも法制度への対応を行う必要があります。
上記対応を行うことでバージョンアップやパッチ適用などで標準の新規機能が増えますが
古い機能については使い慣れている点や業務で利用する場面があるなどから
物理的に削減されることはほとんどありません。
この状況下が長年続いたことによってERPシステムは肥大化しております。
また、システムだけでなく会計伝票や販売伝票など作成することで伝票数が増加し、
さらにデータの整合性を保つために中間テーブルや格納データの増加などあるため
データも同様に肥大化します。その結果リアルタイム性が失われる問題が発生します。
二つ目はサポート切れにより業務や法制度変更の対応を保守で行う問題が発生します。
サポートが切れているために標準バグを見つけた場合に保証がなく、法制度の変更対応や
業務変更による改修リスクなど保守の負担は多くなります。
また、S/4HANAでは徐々に取込まれているIoTやAI、RPAなどの新技術の適用がERPでは
困難となるためビジネス変化が激しい現代で適応していくのも困難になることが予想されます。
解決策は?
解決策は大きく分けて2つあると考えられます。
- S/4 HANAへの移行
- 別ソリューションへの移行
S/4HANAへの移行であれば2つの問題はもちろん解消されます。
リアルタイム性の改善ではS/4HANAに切替えたことによる機能数削減だけでなく
処理の仕組みが変わり膨大なデータ処理も改善されています。
S/4HANAの保守期限も現時点で2040年末までと長期保証が確定している点も解決策としては
最も良い策だと思われます。
また、IoTやAI、RPAなど新技術にも対応しているため将来性もある点見逃せないです。
しかし、移行するためのコストや時期によっては人員不足の可能性があり容易ではないことが
分かります。
別のソリューションへの移行ではS/4HANAよりもコストが抑えられた形で
移行する事が出来る可能性があります。
しかし、リアルタイム性や保守サポートについては製品ごとに異なり定かではありません。
仮にS/4HANAと同様のリアルタイム性とサポートであったとしても
初めて扱う製品となるため運用業務フローの見直しや導入後の教育など費用が発生します。
フルスクラッチともなると初めから構築を検討しなければならないためERP製品の様に
短期納入は難しく開発内容によってはS/4HANA導入費用に加え保守費用分を超える可能性も
考えられます。
まとめ
2025年問題についてはご理解いただけたでしょうか。
サポート切れよりも今後SAP ERP製品を活かして業務を行うこと自体が
徐々に困難になっていることが分かったと思います。
そのためSAP ERP製品からS/4HANAまたは別ソリューションに乗換える必要性があることが
分かります。
S/4HANAの移行にはコストや人員不足など問題がありますが業務効率化による
コスト削減により結果的に大きなメリットを生み出せる可能性があります。
別ソリューションも会社によってはS/4HANAよりも合う可能性があります。
そのため2025年問題、今では2027年または2030年問題に直面する前に検討が
必要となると思います。